保健室から窓の外を見やると、辺りは夕陽の明かりすら消えつつある。部活も終了し、ほとんどの生徒が帰路に着いた時間帯。
棚の整理をしていた手を止めて、俺もそろそろ帰るかと白衣を脱ぎ鞄を手に取った。
すると、タイミング良く開く扉。
「ユーリ、一緒に帰ろ~。」
入り口から顔を覗かせたレイヴン。
彼も帰る準備万端らしく片腕に鞄が抱えられている。
「あれ、今日はシュヴァーンじゃねぇの?朝は一緒に帰るって言ってたけど。」
今朝、同じ車できた彼は確か帰りも一緒に帰ると言っていたはず。
なのに、目の前にいるのはシュヴァーンではなく、弟のレイヴンだ。
「あいつなら夕飯作っとくつって帰ったわよ。ユーリってば、棚の整理しだすと長いんだから。」
「あー…悪い。」
「別にいいわよ~。まぁ、そういうわけで今日は俺の車で帰りましょ。」
ウインクをしながら車のキーを見せる彼は何故か嬉しそうで、そういえば、レイヴンと一緒に帰るのは久しぶりだったと気がついた。
車の運転をしない俺はほとんどシュヴァーンかレイヴンの車に乗せてもらっている。
しかしここ最近、弓道部の副顧問が忙しかったレイヴンは帰りが遅く、大抵俺はシュヴァーンの車に乗せてもらうか電車で帰るかのどちらかで。
記憶をたどるとレイヴンと一緒に帰るのはなんと2週間ぶり。
シュヴァーンの車も良いが、レイヴンの車も俺は落ち着いて好きだ。
双子にも関わらずまったく性格の違う彼らは、乗っている車も全然違っていて、シュヴァーンの車はシンプルながらも大人の上品さが漂うものに対し、レイヴンの車はゆったりとしたワゴンタイプ。
どちらもそれぞれの性格を出しているかのような車を持っている。
駐車場へと移動し助手席に乗り込むと、レイヴンはエンジンをかけながらチラリとこっちを見やる。
「俺が副顧問の仕事で遅いからって、シュヴァーンがユーリ独り占めするのは狡いわよね。」
ニヤリと歪められた口元。
いきなり何を言い出すのかと俺は首を傾げた。
「明日は折角の休みだし、今日はたっぷり俺の相手してよ、ユーリ。」
ほんの一瞬かすめ取るように奪われたキスに赤くなりつつ、動き出した車の中、きっとレイヴンだけではなくシュヴァーンの相手もさせられるだろう未来の自分を愁いて、ひっそりとため息を溢す。
彼も存外嫉妬深かったと今更ながらに思い出した。
(いつも2人も相手にしてたら身が持たねぇよ)
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しょっぱなからエロにしようかと企んだんですが、最初ぐらいはとあきらめました。
つっても、シュヴァーン出てきてないですがorz
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