話があるといって呼び出しておいたユーリは、約束した場所で一人で佇んでいた。
こちらに背を向けて立つユーリに気付かれないよう、静かに剣を鞘から抜く。
自然に浮かぶ笑みはそのままに、剣を握る手に力を込め、その切っ先を目の前に佇むユーリの背に勢いよく埋めた。
「ぐ、ぁ…!?」
傷口から柄の方へ止めどなく流れ、俺の手を真っ赤に染めていくユーリの血。
ズルッ
一瞬の間を置き血塗れの剣を引き抜くと、傷口から更に大量の血がどぷりと溢れでる。
そして、ふらつきつつもゆっくりと振り返る彼の身体。何が起きたのかと此方を振り返ったユーリの目が驚きのあまり見開かれていく。
「レ、イ…ヴン…、なん…で?」
開かれたユーリの口からごぷりと血がこぼれる。
何で、なんて訊ねるユーリにひっそりと笑みが漏れた。
そんなの決まっているじゃないか。
俺達が誰にも邪魔されず幸せになるため。この世界では俺とユーリが幸せになれないから。
それ以外に何があるのよ、ユーリ。
大切な恋人のため。俺はユーリと幸せになれるなら何でもする。
愛してるんだ。
だからさ―――
「…俺様と一緒に死んでよ、ユーリ。」
最高の笑顔を向けて、紡ぐのは最上級のプロポーズ。
(偽りだらけの世界など捨てて)
(死後の世界へ君とふたり)
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あとがき
本文に入れられなかった諸設定。↓
アレクセイから姫を連れ出すよう命令をうけたレイヴン。
逆らっても、命令どうりに動いても、そこにユーリとの幸せはない。
恋人であるユーリとの幸せを望んだ彼がとるのは、とても悲しい方法だった。PR