「出来た、と。」
テーブルの上には、様々な料理が並んでいる。最後に、レイヴンの好きな鯖味噌を置く。
「クゥーン」
ラピードの耳がピクリと動く。そして、ラピードがのそりと立ち上がると同時に、玄関の扉が静かに開いた。
「ただいま。ユーリ。」
帰ってきたレイヴンは、ユーリのところまで来ると、ふわりとユーリを抱き締める。
一回り小さいユーリの身体は、すっぽりとレイヴンの腕の中に収まってしまう。
「おかえりなさい。」
ユーリもレイヴンの背に手をまわし、ギュッと抱きついた。
邪魔をすまいと思ったのか、レイヴンと入れ違いに、ラピードが部屋を出ていく。きっと、今日はエステルかフレンのとこに泊まってくるのだろう。
なんとも気が利く犬だ。
「先に風呂入ってこいよ。ご飯はそれからだ。」
レイヴンから与えられる、触れるだけのキスから逃れ、レイヴンを風呂へと促す。
「わかった。あ、ユーリも一緒にお風呂入る?」
さりげなくレイヴンの腹に、拳を叩き込む。レイヴンはユーリが冷たいなどと嘆いているが、無視を決め込んだユーリに風呂へと押し込まれた。
――冗談じゃない。
レイヴンと一緒に風呂に入ったりしたら、確実にそれだけではすまないだろう。
今までに何度、事に及ばれたことか。
前回、もう二度と一緒には入らないとユーリは心の固く誓ったのだ。
それに
「・・・あの事、どう打ち明けるか考えないと。」
椅子に座り、一人考える。
なるべく普段通りにしていたつもりだが、ちゃんと出来ていただろうか。
レイヴンは勘がいい。変に気づかれてなければいいのだけれど。
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