マンションに着き、ご機嫌のレイヴンが玄関を開けると、美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
俺とレイヴンはダイニングへ足を運んだ。
扉を開けると、出来上がったばかりなのか、湯気のたつ料理をテーブルに並べていたシュヴァーンが振り返った。
「ただいま。」
「ただいま~。」
「おかえり。もう出来てるから手を洗ってきたらご飯にしよう。」
シュヴァーンは笑顔で俺に近づくと鞄を受け取り、背中を押されて洗面所へと俺を促す。
ガキじゃないんだから、そんなこと言わなくても手ぐらい洗うって。
まあ、シュヴァーンも悪気があるわけじゃないからいいけど。
学校ではほとんど笑わないシュヴァーンだが、家だとかなりの確率で笑顔だ。
現に、とてもにこやかに俺と接しているし。
俺が洗面所からダイニングへ戻ると、ご飯を装っているのかシュヴァーンはキッチンの方にいて、
一足先に戻ったレイヴンがテーブルの上の料理を覗いていた。
「おー、旨そうなムニエルじゃない。」
「マジで?俺、シュヴァーンの作るムニエル大好きだぜ。」
「ユーリの料理には勝てないが、そう言ってもらえると嬉しい。」
俺はレイヴンの声を聞き嬉々と椅子に座る。
時々作ってくれるシュヴァーンの料理はどれも美味しく、全部好きだけど、なんといってもシュヴァーンの作る魚料理は絶品。
お茶碗を片手にキッチンから戻ってきたシュヴァーンに笑顔で告げると、謙遜しつつもよほど嬉しいのかシュヴァーンの頬は弛みっぱなしだ。
「ユーリが大好きって…。く~、シュヴァーンなんかに負けて堪るか~!!」
「…ほとんど料理しない奴に言われてもな。」
大好きという言葉に過敏に反応して対抗意識を燃やすレイヴンだけど、当のシュヴァーンはどこ吹く風でちゃっかり俺の隣を陣取っていて、俺はこっそりと苦笑を洩らした。
レイヴンもやれば出来るくせに滅多にしないから、シュヴァーンが言うことも頷けてしまうなんて言ったら拗ねてしまいそうだから絶対言わないけど。
「二人とも、早く食べようぜ。俺、腹減ってるんだからさ。」
「はーい。」
「ああ。」
待ちきれないとばかりに促してやると、くるりとこっちを向く2つの顔。
さっきまで不機嫌だったレイヴンも、無視を決め込んでいたシュヴァーンもにこやかに返事が返ってくる。
いそいそとレイヴンが向かいの席に座り、やっと賑やかな食事が始まった。
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