ころり、と口のなかで飴玉を転がす。
疲れたと言った俺に、少年がくれたそれはイチゴ味のあま~いやつ。
疲れたときには甘いものが良いと言うが、それが苦手な俺にこの甘さは拷問だ。
貰ったものを吐き出す訳にもいかず、どうしたものかと途方に暮れる。
しかし、そろそろ限界が近い。いっそのこと噛み砕いてしまおうか、などと考え出したときに、突然頬をつつかれた。
「おっさん、何食ってんだ?」
「んー?少年に貰ったイチゴ味の飴よ。」
ほら、と舌先に飴を乗せ、舌をつき出すようにして見せてやる。
「…ずりぃ。」
ぽつりとユーリが何かを呟いたが、あまりに小さいそれは聞こえない。
聞き返そうかと思ったが、何故か目の前まで迫った顔に、出したままの舌を戻すことも出来ずにいる。
そして止まることなく近づく顔は、飴が乗る舌先にパクリと食らいついた。
「な、何してッ!?」
「ご馳走さま。」
やっと離れた顔にパニクりつつも尋ねるが、青年は平然と俺から奪った飴を舐めている。
今や俺の舌が感じるのは、微かな甘さを残す、飴の名残だけ。
(ほんの一瞬感じた君の感触は、もう何処にもない)
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