崩れ落ちる神殿をほんの一瞬だけ振り返る。
その目に彼の姿を焼き付けて、振り切るように出口へと駆け出した。
今はエステルを助け出さなければいけない。
だからこそ、彼と共に消えることなど出来なかった。
それでも巻き起こる後悔の渦。
あの暗く冷たい場所に、彼一人、眠らせることなどしたくなかった。
出来ることなら、彼と共に崩れゆく神殿の中に残りたい。
しかし、どれほど願ってももう戻れない。
「行くわよ!」
ジュディの掛け声と共にヘラクレスへ突入する。
そして、俺の耳に届くのは
(恋い焦がれた)
(彼の声)
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