シーフォ伯爵家の一人息子で、幼い頃から仲の良かったフレンとの婚約。
実を言うと、初めてその話を聞いたときから、私はあまり気乗りがしなかった。
でも、両親たちは仲の良い私達をくっ付けたがってるし、フレンも満更じゃないらしく、それがまた複雑だった。
兄妹のように育った相手が、自分をそういう対象として見ていることを知った時の感想といえば、複雑以外の何物でもないだろう。
私にとって、フレンは飽く迄も幼なじみであり、また兄妹のような存在。
どこまでいっても、今の自分がフレンを男として見ることはないのだ。
それなのに、いつの間にか話は進められ、気付いたら婚約までしている現状。
いい加減、諦めた方がいいのだろうか。
フレンのことは嫌いじゃないし、今は駄目でも、結婚すれば男性として見ることが出来るかもしれない。
胸の内で決意を固めていると、ドアがノックされる。
フレンの頼んだ画家が到着したと、執事が呼びに来た。
そういえば婚約した記念に、私の絵を描くよう画家に依頼したと言っていた。
確か、帝都でも結構有名なレイヴンだとかいう画家だったと思う。
待たせては悪いと、執事に連れられ画家の待つ部屋へと急ぐ。
そして私は、彼と出会うことになる。
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