玄関の扉がパタンと音をたてて閉まる。
ユーリは扉を背に、ズルズルと座りこんだ。
無意識に腹へ手をあてたまま。
打ち明ければ、彼は喜んでくれるだろうか。
「ワンっ!」
留守番をしていたラピードがユーリの隣までやって来て、心配そうに見つめている。
「心配してくれて、ありがとな。もう大丈夫だ。・・・よっと」
ユーリは立ち上がると、そのまま台所へと入っていき、料理を始める。
ラピードはそれを見届けると、部屋のすみにある自分の寝床に寝そべった。
そうだ、うじうじ悩むのは自分らしくない。
それよりも今日は、彼が長期の任務から帰ってくる、大切な日。
星喰みとの戦いも終わり、ユーリはギルドの仕事をしながらも下町でレイヴン、ラピードと共に暮らしていた。
そのレイヴンはといえば、結局、騎士団とギルドの両方に所属することになり、それ相応に忙しい日々を送っている。
それでも、夜になればちゃんと家まで帰ってくるし、ユーリとの時間を疎かにしないのは何ともレイヴンらしい。
そんな彼が、今回は騎士団の仕事で2週間ほど帝都から離れている。
疲れて帰ってくるであろうレイヴンのために、今日は腕によりをかけて料理をしようと決めていたのだ。
材料の準備をしていた手が止まる。
レイヴンが帰ってきたら話をしなければならない。
ユーリは再び腹を触り、考えを振り払うかのように小さく頭を揺すった。
予定外のことに時間を取られてしまったが、今から作り始めてもなんとか間に合うだろう。
今は考えずにおこう。
今だけは――
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